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阿久悠で育った

一年をふりかえる時期になった。いくらワシの辞書に「不可能」と「反省」の文字が
載っていなかろうと、少しぐらいは来し方を見つめようという気になる。
てなわけで、今年読んだ本の中からひとつを取り上げ、それを軸にしてあれこれ
案じてみようかと思う。
 <阿久悠 『歌謡曲の時代 ~歌もよう人もよう~』 (新潮社)>
八月、浄土往生を遂げた作詞家の阿久悠氏が、三年程前に刊行した随想集だ。
逝去の報にふれたあと、ふらり立ち寄った書店で手にし、購入した。
ワシにとって阿久悠氏の記憶は、あの伝説的オーディション番組『スター誕生』で
地方から出てきた歌手志望の少年少女たちを鬼瓦の如き形相で批評し、時には
泣かせてしまうほど打ちのめす、一番怖い審査員のおじさん、だった。
ワシは “スタ誕” 出身の歌手では山口百恵の熱狂的ファンだったので、デビュー
当時の彼女が歌った千家和也氏の詞のほうに、自覚的な親しみを持っていた。
だが、阿久氏の『歌謡曲の時代』を読み、ワシがまぎれもなく「昭和の子」であり、
阿久悠チルドレンであったことを、今更ながら改めて思い知った。

氏は言う。
「昭和と平成の間に歌の違いがあるとするなら、昭和が世間を語ったのに、平成
では自分だけを語っている、ということである」
別の箇所で氏は、昭和にあって平成にないものとして「秩序」や「常識」を挙げる。
秩序や常識という「世間」の背骨が、例え見た目にはどんなにみっともなく無様で
あろうと、日本人の無意識に一本貫いておらばこそ、歌謡曲は、生きる。
歌謡曲が生まれず、生きられないこの平成という時代は「不幸な時代である」と。
「今は、歌が痩せてしまった」
とも氏は言った。平成日本人の骨格からは、情念の血肉がこそげ落ちている。

沢田研二、ピンク・レディー等、昭和を担ったスター達のほとんどが、阿久悠氏の
手による歌詞で時代を作っていった。それらを完全に網羅・列挙すれば、辞典が
出来るほどだ。生涯五千篇以上もの歌謡曲を、氏は書き続けたのである。

やはりワシは、阿久悠で育った。阿久悠の歌詞世界に憧れて大人になった。
ふざけて困らせるつもりはないのに、愛に照れてしまう。
懺悔の値打ちもない生き方を、これじゃダメだと思いながら繰り返す。
ところが思い込んだら、どうにもとまらない。

そして、悩みの中で希望の匂いを感じ、あの鐘を鳴らす誰かを信じている。

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