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彼岸(OTHER SIDE)

実は日本オリジナルの仏事、彼岸。四方を海に囲まれた島国の民にとって、
異世界への憧れは本能に近い感覚だろう。対岸が見えない環境で生活する
民族には、隣国と地続きで暮らす民族には持ちえない神秘志向が生まれる。
常世(とこよ)や「ニライカナイ」など、古来から異世界は海の彼方に想定され、
現実の世界とは隔絶した時空として思い描かれた。『浦島太郎』の龍宮城は
海底という異空間で、時間の長さまで違っていた。古代中国の蓬莱山神話や
仙界思想から影響を受けたであろうことは、乙姫の衣装になごりが見える。

仏教伝来以降、唐天竺(からてんじく)とひとくくりにされたごとく、異世界への
憧れは、当時の先進国に対する微妙な劣等感と混合した。
「無仏之世(むぶつのよ)」、「粟散辺洲(ぞくさんへんしゅう)」。
ブッダが生まれなかった国、粟粒を散らしたように小さな辺境の島国、の意。
なにもそこまで卑屈にならなくても、と思うが、どうやら昔から、日本民族には
大国の圧倒的力量を見せつけられると内に籠もってしまう習性があるらしい。
かつての唐天竺が、いまはアメリカに代わっている。

『観無量寿経(かんむりょうじゅきょう)』。彼岸法要の典拠とされるお経だ。
この経典、内容はかなり生々しい。
インドの王家で実際あった相続を巡る血みどろのお家騒動が語られ、王子は
父王を牢へ閉じ込め餓死させようとする。母后は素肌に蜂蜜を塗り、首飾りの
ロケットにお酒を仕込んで面会し、それを夫に舐めさせることで辛うじて延命を
試みる。が、息子の知るところとなり、母は隔離され、父は餓えて死ぬ。
悲嘆にくれた母后はブッダをなじる。
「貴方は仏のくせにこんな酷いことを傍観しているだけなのですかっ?!」
そして、みずから首飾りをひきちぎり大地に泣き崩れる。
「あたしはもう、嫌な話は聞きたくない!嫌な人間には会いたくないっ!」
これに応えてブッダは語りはじめる。
「后よ。西に沈む落日を思い浮かべよ。真っ赤な夕日を心に描いてみよ」
夕焼けの波長が精神を安定させるアルファ波に通じていることは、近代科学の
証明するところだ。やがて母后の前に、光明と共に阿弥陀如来が出現する。
「ブッダよ、この教えを要約してくださいませ」
「私が言いたいのは、ただ『南無阿弥陀仏を称えなさい』、それだけですよ」

日本では、年に二回だけ太陽が真西に沈む春分・秋分を、この経典に語られる
“西に沈む落日” に当て、前後三日を加えた一週間を法要期間とした。
常世伝説に「西方浄土信仰」がミックスして、日本仏教オリジナルの『彼岸』は
生まれたのである。

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