2017年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
フォト

« 『マンマ ミーア!』 | トップページ | あなろぐ悪夢 »

罪(SIN)

一カ月ほど胸に溜めていた思いを吐き出そうと思う。
それはワシ自身の不注意から他者に罪を犯させて
しまったおのれの罪、についてだ。
日印往復、足掛け18年。今では現地ガイドさながら
仏跡参拝や観光に来た日本人を案内している。
「貴重品には注意して下さいね。インドでは盗まれた
ほうが悪い、ということになりますから」

いつもそう云っているワシが、今回、はじめて盗難に
遭った。場所は、寺の中。
ワシが寝泊まりしている部屋へ、毎日、あそびに来る
仏教徒の少年がいた。澄んだ目で両手を合わせ、
「和尚、こんちわあ♪」
その様子を見ていた佐々井秀嶺師から、
「おや、あの子はあんたのインド弟子、第一号だな」
と、からかわれたりした。だが、佐々井師が、
「気をつけろよ」
そう付け加えた理由が、すぐには解らなかった。

或る日、部屋で書き物をしていると、くだんの少年が
やって来た。たまたま仕事に集中していた時なので、
振り向きもせず挨拶だけ返した。
背後で少年がガソゴソ音を立てる。しばらくして、
「ゴミ、捨ててきまぁす」
と出て行ったきり、帰って来ない。
寝床の上に、袈裟とかさねて置いておいた腕時計が
消えていた。部屋中探したが、見つからない。
ああっ!やられた。仏教で「偸盗」は「殺生」にも匹敵
する大罪、仏教徒が仏教寺院で仏教僧侶からものを

盗むとはなんてところなんだ、インドって国は!

が。落ち着いてから後悔した。
彼らインド仏教徒は、ヒンドゥー教徒から「不可触民」
として差別され、犬猫以下に扱われてきた。
無論、盗みは罪である。しかし、そんな倫理観すらも
持ちえない環境へ落とした者の罪は、もっとも重い。
そして、盗みを犯させた我が罪も、同じく重い。

「ほお、あんたもやられたかね?私もよく盗られるよ、
いずれは天下の大泥棒だな。わっはっは☆」
佐々井秀嶺師は、すべてを慈しむように、笑った。

« 『マンマ ミーア!』 | トップページ | あなろぐ悪夢 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

和尚様
年始の挨拶も御無礼しているうちに、立春も過ぎてしまいました。
御元気の御様子、御喜び申し上げます。

さてさて、時計でよかった。
御心や御命が奪われたら大変でした。
それにしても御災難でしたね。
その後、少年に会われて、どんな御言葉をかけてあげられたのでしょう?

>桃青様
まったくのカラ元気ですが、まだ倒れずに生きております。昨夏に罹った心臓疾患もやっとトンネルの出口がほの見えて参りました。
少年は、盗んだ翌日はさすがに逃げて顔を出しませんでしたが、三日後には、シレっとして現れました。しかも入室を許可してないにも関わらず、ズカズカと。まぁ、彼なりの偽装工作だったんでしょうな。
甘い顔は再犯を誘発しますから、まずは一発怒鳴りつけましたよ。
「Mere gali wapas kalo!」(ワシの時計を返せ!)
すると少年は(あ、やっぱ気づいてた?)という表情ですぐさま視線を反らし、
「・・・Pata nahin」(知らないよ)
ここからは、インド映画ファンたるワシの演技の真骨頂。大袈裟な言い回しで、がっくりと肩をうなだれ、こう言いました。
「ワシはお前に盗みをさせた罪でもう当分インドの寺の敷居をまたぐことが許されなくなった。すべてはワシの罪だ。だからお前も、もう泥棒なんかやるんじゃないよ」
すると、敵は一枚も二枚も上手。少年はこう言いました。
「僕がいっしょにササイ・バンテ・ジーにあやまってあげるから元気出しなよ」
さすが、いずれは天下の大泥棒。器が違いますな。子供のイタズラではなくプロの仕事だ。がははははは☆ヽ(´▽`)/
インドの名誉の為に言っておきますが、盗みは悪、という基本倫理はちゃんとあります。ただ、カーストの中に『チョール』という先祖代々、泥棒を生業とする身分があることも事実です。血統階級制の打破、という釈尊以来の仏教の根本を、まずワシら僧尼が明確に自覚しなくてはいけませんな。

和尚様

わはは。そうなりましたか。。
平和日本に住まいするものは、ぎゃふんですね。
乞食も泥棒も世襲の職業という国は、インドばかりでなく案外珍しくないのですが、私達はそのことを知らないか、つい忘れてしまって、いろんなところで的外れな論議をしていることがありますね。

>桃青様
念のため、ですが「乞食」を世襲するカーストはヒンドゥー教にございません。いわゆる物乞いは、血統でそうしているのではなく、働き口が無いためで、それに加え、いわゆる「乞食は三日やったらやめられない」蟻地獄へ嵌まっているわけです。遊行乞食(ゆぎょうこつじき)行者のサドゥー、ブッダや仏弟子、イスラムの『ファキール』など、修行目的で乞食をする人はいますが、それは身分制と直接関係はありません。むしろ仏教やイスラム教の場合、生産社会の職業と密着したカースト制度に対する抵抗として、脱カーストという意味で、乞食になります。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/503578/43934303

この記事へのトラックバック一覧です: 罪(SIN):

« 『マンマ ミーア!』 | トップページ | あなろぐ悪夢 »