2017年10月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
フォト

« 五月の風 | トップページ | 爆発力 »

娘の叫び

夕食を摂るのも忘れて一気に読んだ。
『私はなぜ麻原彰晃の娘に生まれてしまったのか』
~地下鉄サリン事件から15年目の告白~
松本聡香(徳間書店)

オウム真理教の教祖:麻原彰晃こと松本智津夫の四女が
その生い立ちや教団の暗部について赤裸々に綴る。
平易な語りの文体も手伝って、巻置くことあたわざる一書
となっている。
内容的には事件後各メディアで既報の事柄が多いように
感じられたが、やはり実の娘からの視点、心情の吐露は、
想像を遥かに越えて凄絶を極める。

地下鉄サリン事件当時まだ幼かった著者は、人格形成の
基礎となる大切な時期を教団施設内だけで過ごした。
いわゆる“家族の記憶”らしきものはほとんどないに等しく、
父も母も姉や弟達も、カルトの「聖家族」という虚像の中に
いた。だが、実生活は麻原の好色による両親の夫婦喧嘩
が絶えることなく、次々に手を着けた女性信者と妻妾同居
の異常な環境であった。

わずか2才の頃から窓のない一人部屋で寝起きさせられ、
たまに親と顔を合わせることがあれば、虐待を受けた。
父母が相次いで逮捕された後は、世間の目から身を隠し
ながら暮らした。それでも著者は、
  面会室を出て行く父の背中に向かって「大好き!」
  <本文より>
と叫んだ。カルト教祖への帰依などではなく、罪を犯した父
であっても最後の最後まで娘であろうとする。
この張り裂ける思いこそ、いかなる教義や修行、神秘体験
よりも、まさに人間の真実なのである。

この書は、カルト教団のみならず組織に埋没する者たちに
とって多くの示唆を含んでいる。
ジャーゴン(身内言語)だけで思考することになんの疑問も
持たず、むしろジャーゴンの樹海へ入り込もうとする。
例えば既成の日本仏教各宗においても、この樹海指向に
関しては、カルトを批判できないのではないか。

著者は真摯に、父、教団の犯した罪、そして「宗教」と向き
合おうとしている。
その姿勢と生き方に深い感銘を受けた。是非ご一読を。

« 五月の風 | トップページ | 爆発力 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/503578/48294252

この記事へのトラックバック一覧です: 娘の叫び:

« 五月の風 | トップページ | 爆発力 »