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白い糸

白い糸
過日、関東地方某所で暮らすインド仏教徒宅にて法要を
勤めた。
こちらとしては、佐々井秀嶺師が東日本大震災物故者の
慰霊のため緊急来日したことを、彼らにさえも秘していた
不義理を詫びるつもりだったが、みな快く了解してくれた。
「バンテー・ジー(佐々井上人)らしいですよ」
「ワイルトだけど、シャイなのよね」
彼らインドの仏教徒にとって佐々井師は、指導者であると
同時に、父でもある。深い〝情〟でつながっているのだ。
実際、生まれたとき佐々井師から命名してもらった者も少
なくないし、あるいは直々に法名を授かっている。

大震災のあと、原発事故による放射能漏洩を逃れ、一時
インドへ帰っていた者もいた。
そのため今年五月の『BUDDHA PHOORNIMA(仏誕祭)』
を日本ではまだ勤めていない、というのが彼らにとって気
掛かりだったようだ。
「今日は〝ダガー〟をお願いします」
それは、僧侶がパーリ語の経文を唱えながら三回、白い
木綿の糸を信者の右手首に巻き付ける儀式。
白は清廉な心を、木綿は質素な暮らしを、三は仏法僧の
三宝を、それぞれ意味する。いうなれば、インド仏教徒の
ミサンガのようなものである。
香を焚き、ロウソクを灯して仏誕祭のお経をあげたあと、
ひとりひとりの腕に糸を巻いた。
さて恥ずかしながら白状するが、とにかく感情移入し易い
タチなので、彼らの腕を見ながら彼らが先祖代々受けて
きた差別の痛みに思いを致し、何度も視界が濡れた。

やがて、時間の経過と共に、聞きつけた仏教徒が次々と
現れ、アパートの一室に二十人以上詰め込まれる騒ぎに
なってしまった。こうなるともはや、カレーの匂いで満ちた
サウナ状態である。
「バンテー・ジーがお祈りしてる写真を見せてください」
その家のPCを立ち上げ、被災地で読経する佐々井師の
姿を彼らに紹介する。
みな一斉に、画面に向かって手を合わせた。
「いつもこうですよバンテー・ジーは」
インドにおいても、じかに地面にすわり
、虐げられた民衆と
同じ目の高さで語り、祈り、手を携えて立ち上がる。

夜も更けた頃、彼らに見送られながら、白い糸が日本にも
つながっていることを確信した。

(※ 写真は六月、津波被災地で読経する佐々井秀嶺師。
後方に同行取材中の写真家:山本宗補氏)

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コメント

いつも、読ませていただいてます
Twitterでも絡ませていただきありがとうございます

ベタですが必死に生きる大切さ
読むたびに、いつも勇気を頂きます

小さいことしかできないけど、できる範囲で必死に
必死に生きます

>cheemaru様
お世話になってます。ここはやはり、必死ではなくて〝必生〟ですね。(*^-^)

『必生 闘う仏教』佐々井秀嶺著。集英社新書・定価735円。(拙編)

ご指摘ありがとうございます!!
確かに必生ですね
>『必生 闘う仏教』

もちろん、愛読書ですよ(笑
魂から尊敬してます

>cheemaru様
御愛読、深く感謝申し上げます。編者拝。
今後とも『必生』がより広く、また多くの方々に読み継いで行って頂けることを願ってやみません。
合掌。(-人-)

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