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歴史の光と陰

光と陰
今回も日本未公開のインド映画を取り上げる。
『GANDHI my father』
ガンディーの息子ハリラルを主人公に“建国の父”
と呼ばれる偉大な人物を実父に持った男の転落
の人生を描いた問題作。
リード文の「One family's tragedy was price of a
nation's freedom 」が泣かせる。
ハリラルは父を愛するが故に、普通の人間でしか
ない自分を責め苛む。父ガンディーは逆に普通の
父親でいられなかった。周囲の期待は「あの方の
息子!」とハリラルに重過ぎる荷を負わせ、遂に
その人格を破綻に追い込む。
権力闘争に利用され宗教コミュニティに翻弄され、
一時期イスラム教に改宗してまたヒンドゥー教に
戻り、挙げ句は酒で体を壊して、最期には施設で
孤独のうちに亡くなったハリラル・ガンディー。
死亡を確認した医師が言った。
「大人物と同じ苗字だな・・・」

父、モハンダース・カラムチャンド・ガンディー。
痩せこけた体に木綿の粗衣をまとい、計算し尽く
された話術で後世の『名言集』編者に糧を提供し
続ける“マハートマ(偉大な魂)”。
インドの知識人階層なら日常の茶飲み話で使う
程度の格言風な物言いも、彼のカリスマ性により
見違えるほど光輝を増す。代名詞ともなった例の
断食による政治戦略も、喰うに困らない富裕層を
支持者に持った「決死の」断食であった。

さてこの度、比較のためハリウッド版『GANDHI』を
改めて見てみた。
リチャード・アッテンボロー監督作品で、第55回の
アカデミー賞を9部門受賞した長編大作。
しかし、あまりにも創作が過ぎ、またガンディーと
立場を異にしながらインド独立に尽力した偉人達
(アンベードカルやチャンドラ・ボース)を登場させ
ない等、インド公開の際には暴動が起きたという
曰く付きの作品だ。中でも甚だしきは“不可触民”
階級の選挙権を保護する分離選挙制導入に関し
(前回記事参照)、アンベードカルと対立した彼が
上位カーストの世論に訴えるべく行なった(つまり
身分差別を温存するための)断食が、なんとこの
アカデミー受賞作では、ヒンドゥー教徒とイスラム
教徒の対立を諫めた善行にすり替えられている。

虚像が放つ光は、悲劇の影を深くする。

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