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祖国

祖国
映画『Dr. Babasaheb Ambedkar THE UNTOLD TRUTH』
(Ultra社DVD。日本劇場未公開)を改めて観た。
現行インド国憲法の起草者にして、仏教復興運動の指導者、
B.R.アンベードカル博士の生涯を描いた作品だ。日本を始め
諸外国では、インドのカースト制度を廃止したのはガンディー
であるかのように言われているが、事実はそうではなく、この
“不可触民階級”出身の偉人によって成し遂げられたのだ。
しかもアンベードカル博士は、ムガール朝以来歴史の表舞台
から姿を消していた“釈尊の国インド”の仏教を、近代思想の
視点からとらえなおし、現実社会に向き合う行動原理として再
構築した末法灯明の大導師なのである。
にも関わらず、仏教国である筈の日本においては、その偉業
はもとより名前すらほとんど知られていない。
理由は、彼の仏教がいわゆる日本各宗の伝統教学と異なる
点が多いこと、そしてまたインドのイメージ・キャラクターたる
マハートマ(偉大な魂)・ガンディーとカースト問題で対立した
人物であったこと等が、少なからず関わっているようだ。


インドの二大巨星は、両雄並び立たず、の言葉通りだった。
不可触民階級の分離選挙制度(カースト差別によって自由な
投票権行使もままならなかったため)を巡って、両者の対立は
決定的となった。
「選挙を分けることは祖国を分断するようなものです。差別は
心の問題であり、カースト制度そのものは、国をまとめるのに
必要なんですよ」
あたかも賢哲のごとき口調で、諭すようにガンディーは言った。
それに応え、アンベードカルは、
「ガンディーさん。私には祖国がありません」
「なにをおっしゃる。貴方はもう立派な“博士”ではないですか」
「いいえ。生まれた血筋だけを理由に人間以下の汚れた存在
とされ、公共の場所にある井戸の水すら自由に飲ませてもらえ
ないような国を、どうして祖国と呼べましょうか?」

その後アンベードカルは、自由と平等、人間解放のため、仏教
復興を宣言する。

・・・「祖国がない」。「けがれ」。
この言葉は、原発事故による放射能汚染に日々曝されている
現代日本人にもそのまま当てはまる事柄ではないだろうか。
政府は、国民の生命を脅かしながらあくまでも再稼働ありきの
姿勢を変えず 、喉元過ぎればなんとやらの時期を窺うばかり。
或いは一部の国民に見られるような、放射能汚染については
饒舌に語るが、被災地復興支援の話になると打って変わって
寡黙となる現象。
かかる日本の有様は、人間解放の先達アンベードカル博士の
目にどのように映るのだろうか?

本作の中にこんな場面がある。
「不可触民」の参拝を断固拒否するヒンドゥー教徒達が、神を
汚れから守るため、と称し、アンベードカル一行が寺に近付く
前に御神体を外へ運び出してしまった。
その結果、暴動を引き起こし、多くの負傷者が出た。
あまりにも哀しく、また多くの示唆を含んだシーンに思えた。

4月14日はアンベードカル博士の生誕日である。

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