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2013年12月

小さき神々

小さき神々
小さき神々
小さき神々
2013年7月16日火曜。インド東部はビハール州
チャップラ郊外ダルマシャティ村の小学校。
給食の時間。4~12才の貧しい家庭の児童らは、
いつものように小さな掌を合わせ、食前の祈り
を済ませた。
インドは貧困対策と就学推進と栄養状態改善の
ため無料給食を実施しており、貧困層の子供達
にとっては“ご飯が食べられるから学校へ行く”
ことが重要な教育機会となっている。

その日、給食を口にした児童はすぐ異変に気付
いたという。実は午前中、調理係から「食用油
が変色して異臭が感じられる」との報告を受け
た校長は「私の夫の店から買っている物だから
大丈夫!」と怒鳴りつけていた(現場証言)。
そして惨劇は起きた。給食を食べた89名の児童
のうち23人が中毒により死亡。(但し保護者側は
27人を主張。この差違にはカースト差別がある
ものと見られる)。警察の調べで給食から猛毒の
有機リン系殺虫剤が検出され、校長夫婦は一時
逃亡の末に逮捕されたが、詳しい動機等はまだ
公表されていない。
ヒンドゥー教社会において学校長の役職は高位
カースト者が勤めるのが通例。ダルマシャティ
のような僻地農村の住民は四姓階級の最下層で
ある場合が多い。児童、そして調理係(父兄)も、
その階級だった。校長夫婦がカースト差別から
生命を軽んじたことも想像に難くない。

ところで、ヒンドゥー教の原理原則では子供の
死者は供養されないしきたり(人生の義務を果た
さなかった云々が理由)である。
ビハールの州名は、かつてそこに数多くの仏教
僧院=ヴィハーラが存在したことに由来する。
ならば、亡くなった児童にインド仏教の読経を
捧げたい、と拙は思った。
州都パトナから車で往復八時間、小学校の跡地
を訪れた。そこには、真新しい供養塔が建てら
れていた。インド国旗の色に染められた27柱の
救国顕彰碑。【写真上】
無料給食が内包する安全管理の脆弱性を後世の
ために身を捨てて知らしめた『小さき神々』。
せめて英雄化しなければ我が子が報われない、
という親の気持ちに、胸をえぐられた。
そして民衆の祈りにドグマは関係ないことを、
東北の被災地に続き、ここでも教えられた。

パーリ語の読経を終えて振り向くと、村人が集
まってくれていた。彼らの案内で殺虫剤混入の
現場となった給食室へ入る。【写真中】
事件直後、激昂した父兄らによってカマド等の
設備は破壊し尽くされており、今は礼拝施設に
改装工事が進められている。
『活きた宗教は人の心の中にこそあり、教条書
の中にはない』(アンベードカル博士)

村を去ろうとした時、子供の声がした。
「ハロー♪」【写真下】
見ると、溜め池で水浴びする村の少年たち。
陽気にはしゃいだ声が、晩秋の蒼穹に弾け飛ぶ。
ひとりの子が言った。
「僕の妹も給食で死んじゃったんだ。お母さん
泣いてばかりいるんだもん」

合掌。Namo Buddha.

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