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2015年3月

『風の靴』

『風の靴』
今回ご紹介するインド映画は昨年公開された
『Hawaa Hawaai』(仮邦題「風の靴」)。
ムンバイのスラムで母や祖母や幼い妹弟と暮
らす少数部族出身の少年アルジュンは、或る
晩たまたま高位カースト富裕層の子供たちが
インライン・スケートに興じる姿を目撃し、
その魅力の虜となる。
しかし家計を助けて紅茶屋で働くアルジュン
には手が届くはずもない高価なもの。そこで
四人の親友~クズ拾い・お針子・路上の供花
売り・工場の下働き~と計らい、スクラップ
を集めてスケートを自作する。とはいえ完成
しても滑り方がまったく分からない。
「教えてもらおうぜ!」
アルジュンは、高階級子弟にスケーティング
を指導しに来る富裕層の青年、通称ラッキー
に自分をアピール。ラッキーはアルジュンの
秘めた才能を見抜き、コーチを引き受ける。
だが、やがて二人の前にインド社会が抱える
様々な問題が立ちはだかる…。

この映画は世界で好評を博した『スタンリー
のお弁当箱』の製作陣&キャストがふたたび
送り出した〈小さき者への愛〉の物語。
インド貧困層の暮らしを子供目線のカメラで
ドキュメンタリー調に描き、冷酷な貧富の差
や就学の格差を、むしろ淡々と映し出す。

ラッキー青年は、自身が裕福で飢えた経験も
ないため、指導に熱が入り過ぎ、大会を目前
にしてアルジュンを過労と栄養失調に追い込
んでしまう。診察した小児科医はアルジュン
の母親を叱責する。
「ちゃんと食べさせてるの?それにこの子を
働かせてるでしょ。児童の労働は禁止されて
いるのよっ!」

貧困層を代表する五少年の役柄はインド社会
の暗部を象徴している。
少数部族、クズ拾い、お針子、工場の下働き
そして路上の供花売り。彼らはみな、被抑圧
階級(Dalit)、いわゆる「不可触民」である。
これらの伏線を踏まえると、ストーリーに花
を添える美女の役名:プラギャナンダに含意
すら読み取れる。その名はサンスクリットで
プラジュニャーナンダー、般若難陀=智幸。
インド映画のヒロインとしては少々珍しい、
あたかも仏教の尼僧のような名。
現代インドを底辺から改革する動きに仏教が
深く関わっていることは、周知の通りだ。

さて、原題『Hawaa Hawaai』について。
これはかつて、ボンベイの路上生活の少年を
描いた不朽の名作『Salaam!BOMBAY』に
引用された、娯楽映画の劇中歌タイトル。
英語字幕では「ハワーハワーイ」を「Flying
Wheels」と訳していたが実は名作に捧げた
オマージュだったのである。
本作は歌も踊りもない映画だが、ラストまで
一気に引っ張られる。ぜひ日本公開を!

ラッキーは貧困層の現実を目の当たりにして
徹底的に思い知らされる。
「まず食事、次に教育を受けることなんだ。
この大事なことの先に、子供の夢は叶う」
富裕層、いや、先進国では当たり前のことが
当たり前でない子供達が、現実にいる。
そして本作の副題はこう記す。
「Kuch sapne sone nahin dene…」
(幾つかの夢は、眠らずに…)

※『Hawaa Hawaai』劇場用予告編

https://youtu.be/L8WEqUvoJw4
不朽の名作『Salaam!BOMBAY』予告編
https://youtu.be/XYciGm4tziI
娯楽映画のアイテム曲「Hawaa Hawaai」
https://youtu.be/y_FPWx0iRxE

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