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『反骨のブッダ』

  • 高山龍智: 『反骨のブッダ』インドによみがえる本来の仏教(コスモトゥーワン出版)

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至誠通佛

至誠通佛
至誠通佛
2015年4月14日、インド首都デリーにあるジャンタル・マンタル広場で、たった一人の〈元〉日本人が座り込みを始めた。
佐々井秀嶺師、80歳。
当日は、仏教復興運動の先達にして人間解放の父:アンベードカル博士の生誕記念日であり、世界各国の現代仏教徒がそれぞれの土地で祝典を催している時だった。云うまでもなく、佐々井師は「一億人のインド仏教徒」の指導者であり、本来なら例年通り拠点のナグプール市に在って、行事を指揮しているはずであった。

※動画『アンベードカル博士生誕祭2015』
https://youtu.be/SCENSclSdZY

だが今年、師は単身で首都へと乗り込み、文字通り孤軍奮闘・徒手空拳にて、座り込みの抗議行動に突入したのである。その目的はただ一つ、
「釈尊成道の根本聖地ブッダガヤー大菩提寺の管理権を完全に仏教徒のものとする政府決定の要求」
であった。…遅々として一向に進まぬインドのお役所仕事、そのうえ現政権ナレンドラ・モディ首相率いるインド人民党とその背後に控えるヒンドゥー教至上主義集団が、陰に陽に、事態の正常化を阻んでいる。
(大菩提寺管理権については集英社新書『必生』第三章に詳述)
そして、それに加えて昨夏、某日本人がネット上で流した佐々井師に関する死亡虚報がインド国内の反仏教陣営で和文を解する者達を勢いづかせ、結果的に、大菩提寺問題の進捗すら脅かしている現実があるのだ。

ところで、御存知の方もいらっしゃるだろうが、インドの4月は酷暑期の始まりで、デリーの日中最高気温は40度を越える。そんな中、齢八十の老僧がたった一人、あたかも紅蓮の大火焔を背負った不動明王のごとく、座り込んだのである。
「大統領が直接会って話を聞いてくれるまで私は動かん!日限は今日から二週間。28日まで待つ。それでダメなら強硬手段もありえる!」
捨身供養すら仄めかした佐々井師の覚悟は、やがて仏教徒大衆の知るところとなり、協力を申し出た人々が自発的に抗議ビラを作って配布を始めた。
「だがな、座り込みは私だけでいいぞ。こういう政権下だ、人数で訴えれば弾圧の口実を与えることにもなりかねんからな」
それでも佐々井師の周囲には日を追って続々と善男善女が集結した。

さて、現在のインド大統領はP.K.ムカルジー氏。野党の国民会議派に属し、人民党とモディ首相の陰に押し込められたかたちとなっており、大統領御自身も傀儡政権化を警戒して、なかなか人に会いたがらない。そういう人物に直談判を求めたのだから、佐々井師の覚悟のほどが如何に尋常で無かったか判ろう。
しかし至誠天に、いや、如来に通ず。ついにムカルジー大統領の側近から使者が来た。
「閣下がお目にかかりたいとの仰せです」
佐々井師は法的資料を揃えて国家元首に直接手渡し、改めて全世界仏教徒の悲願を訴えた。小柄なムカルジー氏は、
「私の権限で最高裁に働きかけます」
と明言。
たった一人の〈元〉日本人が、巨大な壁を突き破った瞬間であった。

この話を、去る6月来日時に佐々井師から膝詰めで伺った拙は、義憤に駆られてこう言った。
「だけど、例の虚報を流した人物は、果たしてその罪の重さを理解してるんでしょうかね?」

「ん?…さあな」
師は、軽く一笑しただけであった。

【写真上】ムカルジー大統領と佐々井秀嶺師。
【下】協力者が自主制作した抗議ビラ。

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