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「闘う」仏教徒

「闘う」仏教徒
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「闘う」仏教徒
2016年は、後世の仏教史に特筆される年となるだろう。
人間解放の父:アンベードカル博士の生誕125年にして、仏教復興宣言60年の記念すべき年なのである。これに先立つ昨年、わが国の高野山上にアンベードカル博士像が建立されたことは…些か政治的ゴタゴタがあったとはいえ…まさに仏祖の冥祐と云うべきであろう。
日本でアンベードカル博士の存在が一般向けに紹介される大きなきっかけとなったのは、故山際素男先生と佐々井秀嶺師の出会いだった。1981年、インド取材中の故先生は在印邦人から「もう15年も不可触民と暮らしている日本人僧侶がいる」と聞き、駆り立てられるようにして三角大陸のど真ん中、ナグプール市を訪ねた。そこで出会ったのは〈異相〉の日本僧:佐々井秀嶺師。「この人には何か〈憑いて〉いる」と直感した山際先生の問いに、ためらいながらも語り始めた佐々井師の言葉は、まさに空前絶後の物語であった。そして、師の心を鷲掴みにしインドの大地に繋ぎ止めたアンベードカル博士の仏教復興運動‥‥‥。すべては、このふたりの日本人の邂逅から始まった。
爾来、佐々井師渡印からおよそ半世紀を経て、ついに日印公式のアンベードカル博士像が建立されたのである。

しかし現代インド仏教徒の「闘い」は今もやむことがない。去る1月17日、インド南部のハイデラバード市において、被抑圧階級、いわゆる“不可触民”の大学生ロヒト・ベムラ氏(26才)が、カースト差別によって自殺に追い込まれた。彼の遺書にはこう記されていた。
「For one last time. Jai Bheem」(最期の時です、アンベードカル博士に勝利あれ)
…念のためヒンドゥー教義の原則では、被抑圧階級は輪廻転生できない。虫のように涌いて来る存在とされるからだ。それを踏まえた上で彼の記した「one」を読んでほしい…。
あまりにも悲しい死の衝撃はインド各地を揺るがせ、首都ニューデリーや商業都市ムンバイで学生らを中心に抗議運動が巻き起こった。
《YouTube》「ジャイ・ビームを叫ぶ学生たち」

https://youtu.be/FitScCzQWws

さて今日、各方面で云々される《寛容》=tolerance。いつぞや我が国でも「日本的寛容を世界へ」などと夜郎自大な高説を垂れた者もいたようだ。しかし寛容とは、多数派強者の自制をこそ云うのであって、少数派弱者に適応を強いることではない。いまインドでは、仏教徒やイスラム教徒、キリスト教徒など社会的マイノリティの主張に対し、圧倒的多数派のヒンドゥー教徒が「Intolerance (不寛容)」と批判している。和を乱すな、大勢がそう言っているのだから、と。ロヒト氏を自死へと追いやったのは、まさにこの「寛容」という名の順応強制であった。
どこか我が国の空気に通じているように思うのは私だけだろうか。

現在、日本在住のインド仏教徒は、約50世帯を越える。彼らは、生活者として日本社会の中で文化や言語の違いに悪戦苦闘しながら、ブッダとアンベードカル博士、そしてササイ・ジーの教えを心の支えに生きている。
仏教の故国インドでマイノリティだった彼らは、仏教国と思って移り住んだ日本が〈宗派国〉だったこと、そして日本でも相変わらず自分たちが少数派であることについて、どのように感じているのだろうか。
「一番よくわからないのは、なんでこんなに小さく分かれてるんでしょうか、シューハ。不思議ですね。ブッダの教えはとてもシンプルで、すごくハッキリしてるものだと思うんですよ、僕らは」

私が師父佐々井秀嶺から教えられ、固く命じられたことの第一は、
「インド仏教徒を敬え」だった。「日本の坊さんの中には一般の信者を〈在家さん〉などと呼んで僧侶より格下のように言う人もいるがな、それじゃヒンドゥー教のブラーマン(※注:波羅門。カースト最高位の世襲の聖職者)と変わらんじゃないか。ブッダはそれこそ在家出身だ。つまりな、ブッダからお預かりしてるのが、仏教徒なんだよ」

2016年を後世の仏教史に特筆される年に出来るかどうか、それは今後の日本仏教の存続に関わることでもあるだろう。

【写真上】高野山大学に建てられた日本初のアンベードカル博士像。
【中】ナグプールの仏教青年団事務所で気合いを込める佐々井秀嶺師。
【下】ロヒト氏の自死で蜂起した現代インド仏教徒の学生たちとアンベードカル博士像。

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